帝王学の書「貞観政要」をいまさら読むブログ

上司に勧められて貞観政要を読み、色々調べたこと、考えたことをまとめるブログ

組織論としての『貞観政要』 2.君道第一

 出口氏は「三鏡」の教えを、トップが意思決定するための心構えとして大切にしている。「銅の鏡」は自分の顔や姿を映して、元気で明るく、楽しそうかどうかを確認できる。「歴史の鏡」を覗けば、世の中の興亡盛衰を知ることができる。人を鏡とすれば、その人を手本として、自分の行いを正すことができる。いずれが欠けても、バランスの良い決断はできないということだろう。

 

 そういう配慮がトップに欠けていると、「鯛は頭から腐る」状態に陥り、組織もボロボロになっていくというのが『貞観政要』のスタンスの根本にある。

 

 田口氏のレクチャーによれば、君主の道とは「生まれてきてよかった」「この国でよかった」と民に思わせることである。逆にトップが民=百姓に痛みを強いることはどうなのかというと、「猶ほ脛(はぎ)を割きて以て腹に啖(くら)はすがごとし」、自分のすねの肉を切って食べているようなものだという。

 

 食べて腹がくちくなった瞬間に両足がなくなり、倒れてしまう。うまいことを言うではないか。さらに、ここから「すねかじり」の言葉が派生したとは、驚くほかない。国の場合は税や兵の負担をどうするかだが、ブラック企業の見分け方やワークライフ・バランスにもつながってきそうだ。「君道」すなわちトップが持つ権力の色合いが組織のあり方を決めていくということだ。

 

 もともと武闘派だった太宗は、自分の「嗜欲」が災いとなることを何よりも恐れた。色と食の欲望を満足させると、心がだんだんたるんでくる。さらに欲望はどんどん拡大していく性格を持っている。政治どころではなくなる。内部からの崩壊の怖さを太宗は思い、「縦逸」(気ままで安逸な行為)を慎むと言っている。